Terroage Fukushima テロワージュふくしま

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    (Japanese) 「和の鉄人」のもと磨いた腕で生み出す逸品
    常磐ものといわきの野菜に与える新たな輝き

    • (Japanese) [和食]美味いもん屋 わ多なべ
    • Hama-dori・Iwaki

    (Japanese) わ多なべのスペシャリテ「どぶ汁」。いわきの漁師めしを鉄人・道場六三郎師匠仕込みの卓越した技で極上の逸品に仕上げる。店名の文字も師匠から贈られたもの。

    (Japanese) 寒流の親潮と暖流の黒潮がぶつかるいわきの沖合。プランクトンを求めて多くの魚が集まるこの潮目の海で獲れる魚は昔から「常磐もの」と呼ばれ、その質の高さから地元はもちろん東京の市場でも高値で取引されてきました。メヒカリ、ヒラメ、カレイ、カツオ、サンマ、タコなど、季節ごとにさまざまな海の幸が水揚げされ、食通をうならせます。

    そんな常磐ものを代表する魚の一つがアンコウです。「西のフグ、東のアンコウ」とも称される高級魚の代表格。いわきでは鍋の定番として食される他、「どぶ汁」と呼ばれる漁師めしの食材としても長く親しまれてきました。

    いわき市平の一角に、その「どぶ汁」を求めて市内だけでなく関東からも多くの人が訪れる店があります。美味いもん屋 わ多なべ。あの「和の鉄人」のもとで腕を磨いた大将が腕を振るう名店です。

    (Japanese) わ多なべの店主、渡邉達也さんは地元いわきの出身。16歳で料理の道へと進みました。地元の寿司店で働き始めて2~3年が経った頃、一冊の本と出会い大きな影響を受けます。1990年代に一世を風靡したTV番組『料理の鉄人』に出演し「和の鉄人」として名を馳せていた料理人、道場六三郎さんの本でした。

    「この人のもとで勉強したい」

    20歳の時、渡邉さんはその一心で道場さんに手紙を書きます。

    「“本当に働く気持ちがあるなら一度面接します”と、一言それだけ返事が返ってきたんです。指定された日に東京に行くと、一日私に付きなさいと言われて仕事を手伝いました。

    その日の仕事が終わり、いわきに帰る電車の時間に合わせて事務所で着替えをしていたら、“お前いつから来れるんだ?”と道場の親父さんが言ったんです。うれしかったですね。ただ、そこからは地獄の日々でした。」

    和食を極めた鉄人のもとでの修業は厳しいの一言。そんな毎日に弟子の多くが入っては辞めていく中、渡邉さんは必死に食らいつき、その技術と精神を身につけようと励みます。師匠の指示で和食だけでなくフレンチや中華料理の店でも経験を積みました。5~6年経ち、腕が認められるようになると、今度は長崎の佐世保や金沢など地方の店で働くことをすすめられます。地方には地方の流儀があり、その流儀も学びながら、気がつくと10年もの長きにわたって道場さんのもとで腕を磨いた渡邉さん。その日々をこう振り返ります。

    「本当に厳しい人ですけど、あそこまでいろいろ経験させてもらえたのは道場の親父さんのやさしさだと思います。親父さんのところに修行に来るのは、ほとんどがどこかの店の2代目なんです。でも私は実家が料理屋なわけでもなく、本当に何もありませんでしたから、こいつにはいろんなことを経験させなければいけないと思ってくれていたんでしょうね。佐世保や金沢に行かせてくれたのも、フレンチや中華を勉強させてくれたのも、独立してからいろんなお客さんのご要望に応えられるようにという想いがあったからだと思います。」

    そんな師匠の想いを胸に、2008年、ついに渡邉さんはいわきに自分の店を構えます。のれんの文字は師匠が書いてくれたもの。渡邉さんが最も大切にしている師匠からの贈り物の一つです。

    My
    Terroir

    (Japanese) カウンター6席と座敷のテーブルが4つの店内。カウンターの上には大きな里芋の切り株が置かれていました。市内のファーム白石、白石長利さんが育てた里芋「長兵衛」の株です。

    地元に戻ってすぐの頃は何をどこからはじめればいいのかわからなかったという渡邉さん。小名浜の港で船から魚を下ろす手伝いをしたり、地元の農家の畑に足を運んだりして関係を構築する中、東日本大震災後に出会ったのが白石さんでした。

    「私たちの世界は農家さんなしでは商売ができませんし、白石さんのようにこんなに頑張っている農家さんがいるなら、私も何かできることを考えなければいけないと思うようになりました。

    白石さんはお店にもよく来てくださいますが、その日の料理に使われている自分の野菜がどういうものか、居合わせたお客さんに説明してくれるんです。それでみんな仲良くなって話をして、そんな雰囲気を作ってくれることが本当にありがたいです。」

    白石さんとの出会いをきっかけに人脈は大きく広がり、今ではいわきを飛び出して県内各地の生産者や料理人とのつながりも生まれたという渡邉さん。師匠との19年で得たものとは違うつながりを、地元での仕事を通じて強く感じているようです。

    My
    Mariage

    (Japanese) 「食材を絶対に無駄にするな。成仏させなさい。」

    それが、道場さんから得た学びの中で最も大きな言葉の一つだったと渡邉さんは振り返ります。そんな渡邉さんの料理は、まさに一つひとつの食材の味わいを引き出し丁寧に仕上げたものばかりです。

    この日まず出していただいたのは、「長兵衛」を使った長兵衛まんじゅう。中には常磐もののヒラメに銀杏、柿、エビを忍ばせました。ニンジンや里芋のチップス、細かく刻んだドライのシャインマスカットや巨峰で彩り、出汁の旨味が凝縮された「あん」をたっぷりとかけて仕上げました。出汁に使っている鰹節を除けば、すべてが福島産の食材。まんじゅうの中からひと口ごとに福島の味が顔をのぞかせる、宝探しのような楽しい一品です。

    お酒をチョイスするのは二人三脚で店を切り盛りする奥様です。長兵衛まんじゅうに合わせたのは、会津若松市 宮泉酒造の「寫楽 純米吟醸」。コメの味わいをしっかりと感じる、旨味の豊かな人気酒です。

    お酒は定番のものに加えて季節ごとの旬の酒も揃えます。フレンチのエッセンスも盛り込む渡邉さんの料理に合わせワインも用意。お客様のお好みやご希望もうかがいながら、奥様が感じるその日一番のマリアージュを提案してくれます。

    Terroage
    Menu
    • (Japanese) どぶ汁。合わせるのは大七生酛の熱燗

    • (Japanese) カウンターの先には道場六三郎氏に学ぶ自身の写真を掲げている

    • (Japanese) 師匠直筆の店名の文字は大きな財産の一つ

    (Japanese) 次に用意していただいたのは、どぶ汁。アンコウはもちろん常磐ものの極上品です。もともとは漁師めしであるどぶ汁は、アンコウの胆を味噌と一緒に炒め、アンコウと大根から出る水分だけで炊くものですが、多くの食通をうならせてきた渡邉さんのどぶ汁には漁師めしの枠を超えた品格のようなものを感じます。アンコウの香りは残しつつ生臭みは完全に取り除き、身の旨味と食感を存分に味わうことができる、わ多なべのスペシャリテ。シーズンになると、その味を求めて県内外からお客様が訪れます。

    「震災後、常磐ものが使えなくなり困っていた時に、道場の親父さんに言われたんです。“今お前が地元の食材を盛り立てなくてどうするんだ“って。いわきのために献杯にも来てくれましたし、本当にあったかい人です。だから私は、その想いを受け継いで、地元の味をどうにかしてお客さんに伝えていきたい。どぶ汁もそんな気持ちのこもったものの一つです。」

    このどぶ汁に奥様が合わせたのは、二本松市 大七酒造の「大七生酛」。熱燗でいただきます。どぶ汁の濃く旨味の強い味わいをさらりと流す、すっきりとした辛口の名酒です。

    震災、水害、そして新型コロナウイルスと、困難が続くいわきの食の世界。しかし渡邉さんは、師匠からの教えと地元生産者とのつながりを胸に、今日も食材と向き合いつづけています。

    「親父さんは今でも厳しいですし、今でも怒られます。コロナが広がってからも、 “こういう時こそいい食材を使いなさい”とわざわざ電話をかけてきてくれました。

    今の自分にとって“いい食材”は、やはり常磐ものであり、白石さんを始めとした地元の人が作る野菜や果物ですから、それをこれからも無駄にせず丁寧に使っていきたいと思っています。」

    今後は、お店で料理を味わっていただくことはもちろん、獲れた野菜をその場で調理してアウトドアで味わっていただくようなイベントにも関わってみたいという渡邉さん。和の鉄人のもとで磨いた卓越した腕で、これからも地元いわきの食材に新たな輝きを与えていきます。


    Data

    (Japanese) 美味いもん屋 わ多なべ

    • Address:(Japanese) 福島県いわき市平字白銀町4-1
    • Tel:(Japanese) 0246-24-6269
    • Open:(Japanese) 17:30~23:00(L.O.22:00)
    • Closed:(Japanese) 日曜日・その他不定休