Terroage Fukushima テロワージュふくしま

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    豊国酒造 矢内賢征氏メッセージ 酒造りを重ねるほどに福島の食の素晴らしさを感じます

    実家の酒蔵を継ぎ酒造りに関わって10年余りが経ちました。その間に自分が造った酒を提供して下さる飲食店が県内外に増え、料理人の方や農家さんと出会うことも多くなりましたが、その出会いを重ねれば重ねるほど、福島の食の素晴らしさを心から感じます。震災からの年月を思い、料理人のみなさんの腕の確かさと農家さんの頑張りを心から尊敬します。と同時に、私はみなさんを、いい意味でライバルだと思っているんです。おいしいものを提供する者同士ですから、農家さんにも料理人の方にも負けたくない気持ちがあります。我々日本酒の世界も県内の酒蔵みんなで頑張って、多くの酒蔵が全国新酒鑑評会で金賞を取るようになりました。食と酒、お互いが意識しあえる関係が理想だと思いますし、今の福島にはそうした雰囲気があると思います。

    料理人の方のお話を聞き、実際に食べさせていただく中で、日本酒に対する自分の考えに変化もありました。例えば、「一歩己」というお酒は香りや甘みを大切な要素として造ってきましたが、ここ3~4年は、香りや甘みに加えて「苦み」も重要なのでは、と思っています。これはまさに、料理人の方からいただいた気づきです。

    春の山菜や夏の稚鮎など、旬の食材はあの苦みがあるからうまみが活きてくる。それを料理人の方が捉え、大切にされていることを知った時に、もしかしたら日本酒も、ほんの少しの苦みをエッセンスとして加えることで新しい味わいが生まれ、料理人が大事にする旬の食材とマッチするのではと思うようになりました。食と酒の関係は非常に密接であり、料理人のみなさんにはいつも大いに刺激をいただいているんです。

    「地酒」とは、地域の人が自慢できる、誇りに思えるような酒のことだと私は思っています。では、誇りに思ってもらうにはどうしたらいいか。例えば地域のお米やお水を使うこともその一つだと思いますし、県外へ売り出すことも地元の誇りになるとは思いますが、一番は、まず私自身が地域の人、地域の米、地域の水、地域そのものを誇りに思わなければ、酒も誇りに思ってもらえないのではないかと私は考えています。土地の歴史、地形、風景を知り、愛着を持ち、他の地域の人がいらした時に誇りを持ってそれを語れるかどうかは、地域の食文化、酒文化に関わる者として絶対に必要なことだと思っています。

    そうした考えがあったので、テロワージュふくしまの理念は自分の感覚にとても近いものだと感じました。とりわけ震災以降、福島では農家さんと料理人の方と酒蔵の結び付きがとても強くなりましたが、この流れをもっと根付かせるために、その環境づくりの役割をテロワージュふくしまが担って下さるのではないかと思い、期待しています。いずれはその活動が福島全域に広まり、県内のどこに行っても当たり前のようにその結び付きを体感できるようになる日が来るのを楽しみにしています。

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