Terroage Fukushima テロワージュふくしま

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    正統派リストランテで培われた経験・技術と
    地元素材の出会いから生まれるイタリア郷土料理

    • [イタリア料理] IL CASTELLO(イル カステッロ)
    • 浜通り・いわき市

    イタリアの郷土料理や家庭料理のエッセンスを福島の食材に注ぎ込む。オープンから1年。常連客も増えてきた。

    JRいわき駅の北側に切り立つ急峻な台地。かつてここには「磐城平城」が築かれ、幕末には戊辰戦争の激戦地の一つともなりました。わずかに残る石垣や水堀に、その歴史の名残りを感じることができます。

    そんな城跡の住宅街の一角に、白壁が緑に映える一軒家イタリアンがあります。店の名前は「イル カステッロ」。イタリア語でまさに「城」と名付けられたこの店で腕を振るうのは、地元いわき出身の木村直人シェフです。東京での20余年にわたるイタリア料理の経験を活かし、2019年5月、実家の隣のこの場所に満を持してこの店を構えました。

    共に店を切り盛りするのは、東京出身の奥様、良子さん。料理は木村さん、お酒のサーブは主に良子さんが担当しています。震災からすでに8年経っていたとはいえ、その影響がぬぐい切れないいわきでの再スタート。快く送り出してくれた奥様のご両親には感謝しかないと木村さんは語ります。

    木村さんは高校卒業後に上京。東京の調理学校で和食を学んだ後、ホテルや洋食店を経て、フィレンツェに本店がある有名リストランテの銀座店に入りました。しかし、1人3万円も4万円もするリストランテのディナーが本当に自分の作りたい料理なのかと考える時期があったと言います。

    「イタリア料理と言ってもいろいろなランクがあります。その中で、リストランテで提供されるようなものよりも、もっと多くの人に楽しんでもらえる郷土料理や家庭料理のほうが自分には合っているような気がしたんです。

    イタリアの家庭料理って、言ってしまえば“なんでもあり”なんですよね。例えば、乾燥して硬くなったパンをふやかして料理に再利用してみたり。そういう発想が、自分にはとてもおもしろく感じられたんです。」

    ここ、「イル カステッロ」は、窓越しの木々の緑が美しい落ち着いた店内で、イタリアに本店を置く正統派リストランテで培われた木村さんの確かな経験・技術によって生み出されるイタリア郷土料理の創作の数々を楽しめるお店です。

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    肉厚で丸々としたいわきの穴子を魚の出汁「ブロード・ディ・ペッシェ」で炒める

    いわきに移り早1年。地元の食に対する知識や生産者とのつながりを広げる中、店のメニューに地元いわきの食材を活かす機会も増えてきました。その一つが、穴子。市内の沼の内港で獲れた、脂の乗った穴子です。

    「イタリア料理ではうなぎを使われることがありますが、それを応用していわきの穴子を取り入れました。実は、いわきで育ったのにいわきで穴子が獲れるって知らなかったんです。でも使ってみると、時期によっては鍋に大きく火が上がるほど脂が乗っていて、いわきの穴子は本当においしいと思います。」

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    燻製穴子とじゃがいもを包んだファゴッティーニ

    その沼の内産穴子を使った木村さんの一皿。40~50分ほど燻製にかけた穴子とオリーブ、ドライトマトを、魚の骨を炊いて取った出汁「ブロード・ディ・ペッシェ」と絡めます。そこに、マッシュしたじゃがいもとパンを包んだパスタ「ファゴッティーニ」を混ぜ合わせました。出汁をまとった穴子の燻製の風味と塩味が、程よくパスタと絡みます。店で提供されるパスタは100%木村さんの手打ち。季節や気候によって微妙に配合を変えながら練り上げます。

    合わせるお酒は、いわきワイナリーの白ワイン「MIRAI 甲州2018」です。

    「キリッとした辛口の白ワインと淡白なアナゴの旨味がよく合いますし、スモーキーな燻製の香りとワインの苦みやキレとの相性もいいと思います。パスタの中身が少しまったりしているので、その点でも辛口のワインをおすすめしたいです。」(良子さん)

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    • 麓山高原豚のポルケッタ 季節野菜のロースト添え

    • 仕込みに約4日かかるポルケッタ。最後は表面を焼いて提供される。

    • オープンから1年。高台に佇む白亜の「城」は確実に地元に根を張り始めている。

    福島を代表するブランド豚「麓山高原豚」も、いわきに戻ってから木村さんが手にするようになった食材の一つ。そのバラ肉で、ヴェネツィアの郷土料理「ポルケッタ」を作ります。

    ハーブや調味料などを豚肉に巻き込むポルケッタ。家庭ごとにさまざまな味付けで作られますが、木村さんは、ローズマリー、にんにく、パン粉、イタリアンパセリ、フェンネル、オレガノ、黒コショーを巻き込みます。丸めた状態で冷蔵庫で1日、冷蔵庫から出して1日、さらに次の日にオーブンで5時間。さらに寝かせて1日。計4日をかけてじっくり作られる料理です。最後はフライパンで焼き上げてお客様に提供されます。かたわらには、いわきで穫れた葉玉ねぎのローストを添えました。

    このポルケッタには、郡山市 逢瀬ワイナリーの「CIDRE 2017」を合わせます。

    「完熟した“ふじ”の風味と豚の旨味、舌に残るシードル後味とポルケッタの香草がとてもマッチします。豚の脂味を感じ過ぎることなく、気持ちよく爽やかな余韻を感じていただけると思います。」(良子さん)

    オープン当初は「本当にお客さんが来てくれるのだろうか」という不安が大きかったと言う木村さんご夫妻。駅からのアクセスでは急な坂道を登ることになるため、立地面のマイナスを心配したこともありました。しかし、いわきの街を見下ろすそのロケーションと城跡の静かな佇まいは、むしろ店の大きな魅力となっています。

    オープンから1年。少しずつ、そして着実にいわきの地に根を張り始めた2人の「城」で、これから木村さんが目指すもの。それは、ここだからこそできる、新しい価値を持った料理の創造です。

    「調理方法にしてもパスタの形にしても、イタリア料理の手法の中でできることはもう世の中に出きっていると思うんです。じゃあ自分に何ができるかと言ったら、やっぱり福島の食材をどう活かしていくかだと思います。今までのイタリア料理ではタブーだったようなことにもトライしたいですね。おいしかったらそれでいい、そのぐらいのスタンスでチャレンジしたいと思っています。」


    Data

    IL CASTELLO(イル カステッロ)

    • 住所:福島県いわき市平旧城跡17-4
    • 電話:0246-85-0800
    • 時間:ランチ/11:30~14:30(ラストオーダー 13:30) ディナー/17:30~21:30(ラストオーダー 20:30)
    • 定休日:日曜、第2・第4月曜
    • 平均予算:昼1,500円~3,000円 夜5,000円~10,000円