福島の食材をとことん使ったフレンチに酔いしれ
大切な人とスペシャルな時間を過ごす
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地元の食材と高い技術でミシュランの星獲得を目指す。さらに腕を磨きたい料理人たちの集まり
郡山市「日本調理技術専門学校」に隣接するフレンチレストランをご存じでしょうか。
2022年にオープンした「The Restaurant」は、有名店「KIHACHI」の元総料理長・鈴木眞雄シェフがエグゼクティブシェフを務める店。鈴木シェフはKIHACHIの創業から関わっていたキーパーソンということもあり、料理通なら驚くようなビッグネームです。「そんな有名な人がなぜ郡山に?」と、思う人もいるでしょう。実は地元が郡山市。
「The Restaurantは一般的なお店と違うところがあって。この店は今よりもさらに高い技術を身に着けたいと思っている料理人のための訓練校です。併設の専門学校で学び、料理人としてそれぞれの道へ羽ばたいた卒業生などが対象。私たちと共に働いて実践の中で学んでいくのが特徴です。」
この店で提供されるのはコース料理のみ(要予約)。そして、そのすべての皿に共通しているのが、福島県内産の食材を積極的に取り入れているということ。地元で採れる旬の食材を積極的にメニューに取り入れ、生産者自身も知らない素材の持ち味を引き出すことに努めています。
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「まずは地域ならではの食材を使って、新鮮でいい状態のままお客様に提供する。そのために農家さんへ足を運び、情報交換をしています。また、お世話になっている郡山市の『鈴木農場』さんのバックアップで、今、学校の方では畑づくりも行っているところ。近いうち学生が作った食材も皿に並ぶようになるかもしれません。」
鈴木シェフと話していると、言葉の端々に福島県産の食材をとても大切に思っていることが伝わってきます。その確固とした信念から生み出される一皿ひとさらが、ここで働く料理人にとって見本となります。
清潔に保たれたスタイリッシュなオープンキッチン。真っ白なユニフォームに身を包むシェフたちの包丁さばきや、立ち上る湯気の臨場感。料理が提供されるまでの待ち時間が楽しめるのもこの店の醍醐味です。
さて、今日はどんなペアリングが楽しめるでしょうか。
Terroir
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今あるものを徹底的に磨い提供。特別な日に来店したい思い出に残るレストラン
最初に供されたのは、スペインの郷土料理「パンコントマテ」。これはスペイン語で「パンとトマト」という意味です。鈴木シェフはトマトの代わりに須賀川市にある『おざわ農園』のいちごをセレクトし、オリジナルアレンジ。おざわ農園のいちごは驚くほど味が濃厚で、ガーリックが塗られたパンや生ハムと同時に食べても負けない強さを持つ一級品。上品なうまみと共に、さっぱりといただけます。
「今感じている空気も使っている水も地元の物。それは、ここにしかない良い物です。その魅力を磨いた方がいい。だから私は徹底的に地元の物を使っているんです。」
その言葉通り、鈴木シェフのセレクトは食材だけに限りません。調味料や食品なども福島県産の物が積極的に使用。そして、うれしいことにお店で使われている調味料などの一部は併設するセレクトショップで購入することができます。というのも、The Restaurantの店名に入っている「The」には「最高の」という意味の他に、人が集う場としての「座」が掛けられているから。地域の食文化と食ビジネスの発展に果たす「食のプラットフォーム」を目指し、様々な人が利用しやすいよう広く門戸が開放されています。
例えば、先ほど触れたセレクトショップ。建物入り口を入ってすぐの場所にあり、県内や東北のおすすめ品を販売しています。その横には、おいしそうに並べられた焼き菓子や種類豊富なパン。さらに最奥進むとレストランの手前に、気軽に利用できるカフェエリアがレイアウトされています。
コース料理のみだと敷居が高いと感じられる人も、雰囲気をのぞき見てから利用できるので安心ですね。じっくり検討して、とっておきの記念日に利用する。ここは、そんな特別な日に訪れたいレストランです。
Mariage
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料理は一期一会。その時の料理とお客様の好みで選ぶ、最高のペアリング
この日の肉料理「福島産牛肉とカブのロースト ガーリックグリーンペッパーソース」におすすめされたのは、吾妻山麓醸造所で作った「Cabernet Sauvignon2022」。山形県寒河江市産のカベルネ・ソーヴィニヨンを使用したこのワインは、鼻に抜ける爽やかな香りが特徴です。
吾妻山麓醸造所と言えば福島市にあり、今、県内で最も勢いのある醸造所のひとつ。そんな醸造所から「相馬産スズキのポワレ 菜の花とカシューナッツのソース」にも相性の良い一本があると提案がありました。それが「新鶴シャルドネ2023」。こちらは1,000本限定の希少なワインで、ボリュームのある力強い辛味が風味よく仕上げた一皿と抜群の相性です。
「当店で提供するメニューは一期一会。同じメニューは出来るだけお出ししないようにと考えています。」と鈴木シェフ。それに伴って、お酒のラインナップも当然豊富になってきます。もちろんお酒はワインに限ったことではありません。料理とゲストの好みに合わせて、日本酒が提供されることも稀ではありません。
「料理って美味しいだけじゃないんです。お店ではお客様から時間をいただき、日常とは違った特別な空間を売っている。それも含めて料理なんです。お客様にご満足いただくため、ここで働くスタッフにはお客様の表情をよく見るように言っています。表情や食べるペースのだけでなく、お客様が何か残せば、なぜ残ったのかウエイターに聞いて好みを把握しています。」
さらに鈴木シェフはこう続けます。
「何事も目標を持ってやらないと。この店は、ミシュランの星を取れるようなレストランを目指しています。」新たな目標を前に、スタッフと共にさらなる高みを目指す鈴木シェフ。これからも福島の食を追求し、けん引し続けて欲しい。
(執筆/木俵麻樹子)
THE RESTAURANT(ザ レストラン)
- Address:福島県郡山市安積4-230 (日本調理技術専門学校 隣 THE KITCHEN PLAT FORM内)
- Tel:024-973-8033
- Open:ランチ(水~日曜日営業 11:30~)、ディナー(水~土曜日営業 18:00~22:00 )
- Closed:月、火、最終水曜日(※定休日および営業時間は、変更となる場合があります。詳細はHPへ)
- Average Cost:ランチ2,200円~、ディナー11,000円~(要予約)