料理・酒・人との「出会い」をつなぐ店
猪苗代産「亀の尾」のリゾットに漂う本格派イタリアンの風格
郡山駅前の喧騒から離れた街の一角に佇むインコントラヒラヤマ。20代の若いファンから年配の常連客まで、幅広い客層に愛されている。
料理との出会い、食材との出会い、酒との出会い、そして人との出会い。食の場は、多くの出会いにあふれた場でもあります。そしてその出会いは、人生に多くの新しい発見や驚きを与えてくれます。
郡山駅前の西口を出て、歩いて10分ほど。繁華街を抜けた住宅地の一角に、そんな「出会い」を意味するイタリア語「Incontra(インコントラ)」の名を冠したイタリアンレストラン「インコントラヒラヤマ」があります。オーナーシェフの平山真吾さんがここで毎日提供するのは、地元でとれた旬の食材をふんだんに使った本格派のイタリア料理です。
猪苗代町に生まれ育ち、子供時代には家で採れた野菜や米を当たり前のように食べて育ったという平山さん。やがて故郷を離れ、大阪の飲食店などで修業をしましたが、都会のスーパーで売られている野菜には「味がない」ことに驚いたと言います。それが、地元の食材を積極的に使う今のスタイルに至る一つのきっかけになっています。
その後、イタリアを始め世界各国を旅し、料理の知識と経験を体に染み込ませて帰郷。実家のペンション2階に開いたレストランを経て、2015年に満を持して郡山に店を開きました。
平山さんの料理には、素材の良さをシンプルに活かしながらもしっかりとしたメリハリがあります。それはまさに本格派というべきクオリティ。和製イタリアンの趣はなく、彼の風貌がそのまま料理になったような、力強くパンチの効いた「男イタリアン」です。今や郡山の食通はもちろん、県内各地、さらには大阪の修業時代に彼の料理に惚れ込んだお客さんもはるばるやって来るなど、郡山を代表するイタリアンレストランとして人気を集めています。
Terroir
粒立ちや光沢の良さが際立つ猪苗代 つちや農園の「亀の尾」
料理に取り入れる地元の食材の中でも、平山さんが特にイタリア料理との相性の良さを感じているのが、故郷・猪苗代で育てられる米「亀の尾」。明治時代に山形で生まれたこの品種は、寒さに強い一方、化学肥料との相性が悪いとされ、一時は大量生産の時代の波に飲まれて「幻の品種」とまで言われました。しかし、自然栽培が見直される中で徐々に復権。近年は酒米としても多く用いられるようになっています。
平山さんが料理に使う亀の尾は、猪苗代の中学時代の先輩である「つちや農園」の土屋直史さんが育てたもの。化学肥料はもちろん、人の手によって土に余計な手を施すことなく栽培された亀の尾が、平山さんの手によって極上のイタリアンへと変身します。
Mariage
亀の尾のリゾットは日本酒とも絶妙なマリアージュを見せる
その「亀の尾」を使って平山さんが作ったのはイタリアの代表的な料理の一つであるリゾット。合わせるのは、矢吹町 大木代吉本店の「楽器正宗 本醸造中取り無濾過原酒」です。
「つちや農園の亀の尾には、リゾットのソースに負けない存在感があります。それに、粒が丸くて出汁を吸いやすい。これまでさまざまな米でリゾットを作りましたが、この亀の尾が一番おいしいですし、日本酒との相性もいいんです。」
亀の尾以外の県産食材にも強い興味とこだわりを持つ平山さん。食材の生態系を知るために猟師と共に山に入ることもあると言います。料理への情熱(パッション)を強く感じさせるメニューに加え、奥様によるお酒選びもお店の魅力の一つとなっており、イタリアを中心にふくしまのお酒も交えサーブされます。カウンター席で、平山夫妻との会話を楽しみながら、本格派イタリアンの風格を感じてほしい名店です。